2011年7月22日金曜日

Las capacitaciones 2 経済自立のための研修2

Las capacitaciones 1 経済自立のための研修1、の続き。

今回から、各クラスの詳細を見て行きます。

1)ビジネスクラス        Curso de Negocio
2)価値クラス          Curso de Valoes
3)お金との付き合い方クラス Curso de Finanzas Sanas
4)自尊心クラス         Curso de Auto Estima
5)法人登記・税金のワークショップ Taller de Registro de Negocios

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1)ビジネスクラス        Curso de Negocio

プロジェクトの求心力となっているのは、月例会議。それと同等、もしくはそれ以上に重要な位置づけなのが、ビジネスクラスです。「自分は、経済自立に向けて、プロになるために、準備をしているんだ。」という意識を、最も明確に持たせることができるからです。私はこの”経済自立に向けた本気モードに火をつける”ことは、プロのサービスを受けることで、プロになれると自信を持ってもらう・プロになるんだと覚悟してもらうことができるため、重要なことだと考えています。彼女たちは、今まで自分を「プロ」として扱ってもらったことがないからです。
支援してくれ、と要求するばかりではなく、自分の足で動きだすんだ、と自覚させる。このスイッチの切り替えは、ソーシャルサービスを実施していく上でとても重要なポイントですが、それは、生まれて初めて自分をプロフェッショナルとして扱ってもらえたという誇りを得た感覚に、他ないのではないでしょうか? だからこそ、彼女たちを子ども扱い・どうせできないんでしょという心理で接することは禁じ手だと考えています。逆に言えば、このスイッチさえ入ってくれれば、青天井になる可能性を秘めていると思います。
そのスイッチを入れるためには、市役所内のポテンシャルだけでは難しい。ちょっと他機関に協力をしてもらいましょう。あなたはプロです、と扱ってくれる機関に。

本クラスの目的は「自身のビジネスプランを作成すること」「将来の事業拡大への可能性を得ること」です。これは、2つの銀行とPRONAMYPE(労働省(Ministerio de Trabajo)の貧困層支援機関)の、3つの選択肢から1つを選んで受講する形式を採っています。どの選択肢を採っても、基本的に学ぶことは同じであり、またビジネスクラス受講の後は、希望する場合と審査に通れば、事業を作る・拡大するための融資を受けることができます。研修と融資がセットになったクラスです。

選択肢1: Banco Nacional(Banca Mujer) 国立銀行(女性銀行) 6週間 (4時間x6回=24時間)
選択肢2: Banco Popular みんなの銀行  6週間 (4時間x7回=28時間)
選択肢3: PRONAMYPE  15週間 (4時間x15回=60時間)

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まずは選択肢1のBanco Nacional (Banca Mujer)。この銀行とのアライアンスによる第1回目のビジネスクラスは、下記の通り、サンホセ市役所女性課に当時来ていた150名の中からトップ20名の女性に対して実施されました。(実施までのプロセスは、caso Karla カルラさんのケース の中で紹介しています。)

【選択肢1 Banco Nacional 第1回目 実施内容】
・期間    2010年9~12月の4ヶ月間
・時間    毎週水曜日午後1~5時(4時間) x 20週 = 80時間
・対象者数 20名
・参加条件
-クレジット履歴がクリアであること
-商品の質が高いこと
-経済自立に対するモチベーションが高いこと

・採用教材 TECNOMYPE(政府中小企業技術支援機構)
・実施母体 Fundación Omar Dengo オマールデンゴ財団
・実施場所 Sede de Banca Mujer 女性銀行支店の研修ルーム

銀行にとってこのクラスは投資の一環のため、クラス終了後に実際の融資につながる可能性のある人たちが対象となります。2010年9月の段階でこの3つを明確にクリアする人を20名選抜することは、いくら母数が150居たとしても、なかなか大変な仕事になりました。また、選抜された20名の女性も、80時間のクラスに休まず通うことは決して楽なことではありません。

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この選択肢1 Banco Nacional とのビジネスクラス実現を受け、次に解決しなければ問題がはっきりしました。ここは市役所。プロジェクトの目的は、シングルマザー・教育レベルの低い人・貧困層の経済自立です。クレジット履歴がクリアではない人は山と居て、早い話が、銀行の相手にならない人たちがウジャウジャ居ます。この人達の底上げを、どう実現するか?です。

コスタリカ国内には、本当に様々な女性の経済自立を支援する機関が存在していますが、その中に、後の選択肢3となる PRONAMYPE (政府中小企業支援機構)というものがあることを知りました。早速、その代表者Presidente の Sandra と連絡を取り、直接お話をしました。
バングラディッシュには、グラミン銀行という貧困層支援(マイクロクレジット)で大変に有名な銀行があります。その創立者のムハマド・ユヌス氏とその銀行は、2006年に共にノーベル平和賞を受賞しました。PRONAMYPEはそれを鑑みてコスタリカ国特有に作られた支援機関とのこと。つまり、クレジットを既に失っている女性たち・教育レベルが更に低い女性たち・貧困レベルの更に低い人たち「だけ」を対象とした支援機構です。代表者Sandra と始めてお会いした時、「グラミン銀行より良いサービスを提供している。」と自信満々かつ自慢気に、そのサービス内容をお話して下さいました。こういう姿勢が、コスタリカのすごいところだと思います。
「私は市役所女性課であり女性の経済自立支援の仕組みを作っている。現在、Banco Nacionalとの連携が始まったところだが、クレジットがクリアな人しか受講することができず、底辺層への支援をどうすれば良いか考えている。本機関とどんな連携が可能かを考えたい。」と伝えると、「底辺層に対して実施するビジネスクラスの予算、並びに、底辺層向けの小口融資の機能を持っている。」と言われました。驚くことに、国の仕組みとして、底辺層に対して実施するビジネスクラス分の予算は大量にある、と言うのです。正直、これはかなりびっくりしました。
そこで先方より、「対象者を選抜してもらい、そのリストを添えて、正式に市役所からの申請書を出して下さい。追ってこちらから詳細を連絡します。ただし、部屋代は拠出することができないので、実施場所は確保して下さい。」と指示を受けました。そして、2010年12月、秘書Rosaが頑張ってくれました。底辺層に絞って40名を選抜し、正式に申請書を提出。この選抜もかなりの時間がかかりましたが・・・、もはや秘書は秘書以上の仕事をしてくれてます。。すまない。。

申請から待つこと5カ月。無事、下記の通り第1回目のPRONAMYPEビジネスクラスが実現されました。(現在も実施中です)

【選択肢3 PRONAMYPE 第1回目 実施内容】
・期間    2011年2~9月の4ヶ月間
・時間    毎週火曜日コース/金曜日コース午後1~5時(4時間) x 15週 = 60時間
・対象者  40名(各コース20名づつ)
・参加条件
-クレジット履歴がクリアでない人
-低教育層
-貧困層

・実施母体 PRNAMYPE 政府中小企業支援機構
・実施場所 Mini-Auditorio de la Municipalidad de San José サンホセ市役所研修ルーム
・講師    Doña Flora Calvo Abarca フローラ・カルボ・アバルカ氏(元健康省副大臣)

対象者がクレジット履歴がクリアでない人・低教育層・底辺層のため、銀行が実施しているものと全く同じ研修内容を、3倍の時間をかけて教えています。そして、蓋を開けてびっくりしたことが。担当して下さっている講師Flora氏は、元健康省の副大臣でした。道理で、偉く頭が良い訳だ。。。元副大臣から、ビジネスプランの作成方法を直接教えてもらえるクラス。こんな環境、日本ではあり得ません。考えてみてください。厚生労働副大臣が、あなたのビジネスプラン作成を、詳細まで付き合ってもらえますか? 自分よりずっと遠い存在だった”すごい人”から直接教えてもらえることは、一気に「プロとして扱ってもらえている誇り」感覚を加速させることができると思います。それが、この国の底辺層支援の政府機関が実施している現実。私はこのPRONAMYPE、本当にすごいと思っています。

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さて。グループの女性たちのうち、トップは選択肢1、底辺は選択肢3、と対応することができました。2011年に入り、中間層をどうするかなぁ・・・と考えているころ、こういう時の引きは相変わらず強いわたし。Banco Popular という「みんなの銀行」(※私訳)の開発部の方が、なぜかこのタイミングで、市役所女性課を訪ねて来てくれました。「女性たちの支援のためにビジネスクラスを実施したい。」本当かいな?また、たまたまこの銀行の開発部のオフィスが、物理的に市役所から徒歩5分のところにあり、「詳細を聞きたい。」とその足で秘書Rosaを引き連れ、担当者の上司に会いに行きました。
まずは正確に説明をしなくてはいけないことがあります。「私たちは市役所です。1銀行と密着することは、できません。私たちは、既に御社競合のBanco Nacional(Banca Mujer)とのアライアンスを持っていて、ビジネスクラスを実施しています。」とお伝えすると、「それでも構わない。」と言うのです。聞くところによると、本銀行における実施目的は、融資対象者としての顧客拡大よりも、市民の底上げだ、と。素晴らしいビジョンではないですか。また、このクラスの特徴は下記2つ。

1)銀行員が直接クラスを実施すること
2)連携の経営学部学生がメンターとして、2~3名にひとりづつ付いてビジネスプランの作成をばっちりサポートすること

やらないわけが、ないでしょう。ただ、打ち合わせ先で、先方上司が盛り上がってしまい、「30名でも40名でも、やるぞー!」と大風呂敷を広げ始めてしまいました。担当の銀行員 Jeffery が困っている様子が見て取れ、私から「これは成功をしっかり形にすることの方が大切です。ここは大きく出るより、小さくても良いから、確実な成功ケースを作りましょう。ということで、今回は10名こちらで選抜します。ただし、成功したら、継続的に人を送ることをお約束します。」と話をしました。市役所に戻って早速のGoサインのもと、お会いしてからものの1カ月で、ビジネスクラスへの実現となりました。このクラスが・・・涙が出るほど本当に良いクラスでした。。

【選択肢2 Banco Popular 第1回目 実施内容】
・期間    2011年2~3月の7週間
・時間    毎週木曜日 午前8~12時(4時間) x 7週 = 28時間
・対象者  10名
・参加条件
-クレジット履歴がクリアでなくとも、商品の質が高いこと
-高校レベルの教育を受けていること

・実施母体 Banco Popular みんなの銀行
・実施場所 Sala de Banco Popular みんなの銀行 大会議室
・講師    Jeffery氏 みんなの銀行銀行員
・メンター  提携大学 経営学部学生3名

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これらをどう継続した仕組みに持って行ったか、は別途お伝えするとして、

とにかく分かったことは、この国は、ビジネスクラス=ビジネスプランの作成コースは、多くの機関が実施しています。しかし、他の部分のサポートは弱い、ということでした。試しに、PRONAMYPEに「そこまで予算が付いているなら、ビジネスクラスだけでなく、他のクラスも実施してみない?」と聞いてみたのですが、残念ながらこの予算はビジネスクラスのみに適用とのこと。残念。
例え、立派なビジネスプランだけが作成できても、経済自立へはちょっと遠いように思います。もっと意識的な変化に働きかけないと。市役所女性課の本プロジェクトPAEMとしては、総合的な支援体制を整えて行くことが目的です。そこで、不足分を市役所予算で実現できないか、の検討を始めました。

2)価値クラス          Curso de Valoes
3)お金との付き合い方クラス Curso de Finanzas Sanas
4)自尊心クラス         Curso de Auto Estima
5)法人登記・税金のワークショップ Taller de Registro de Negocios


続きはまた今度