2011年5月9日月曜日

el trabajo del apoyo Autonomía 自立支援という仕事

さて、このブログの中で少しづつ今の仕事について書き始めることにしました。2年間の期間限定の仕事のため、当初は「時間ないー・・・!」とぶっ飛ばして来ましたが、お陰さまである程度枠組みができ、いよいよ最終の引き継ぎモードに入りました。引き継ぎを行う上で、「私が何を重要なポイントと考えていたのか」を客観的に考え直したいと考え、書くことを決めました。

一体どこから書けば良いのかすら分からない状態ですが、書き始めないことには始まらないので、少しずつ、書き始めたいと思います。

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最初にお伝えしなくてはいけないことは、「自立支援とは一体何ぞや?」ということだと思います。少なくとも、私はそれをどう捉えているのか?ということ。


少し私の背景を書くと、私は、日本で若年層キャリア支援・若者の自立支援に関する非営利会社の代表者をして来ました。全くゼロの状態から立ち上げてから丸10年間その仕事を続け、新しい世界を見ようとこの地へやって来ました。今は、サンホセ市役所女性課にて、女性の経済自立・起業支援プロジェクトの新規事業立ち上げのプロジェクトマネージャーをしています。

私ひとりの力では数百名単位の女性たちに総合的な支援をしていくことは不可能ですし、もちろん私の語学力の面でも不可能です。何より私は、この国の法律的な知識やビジネス条件や特性を、詳しく知っているわけではありません。それらは、現場の人たち、つまりコスタリカ人が一番良く知っています。
そのため、私は最初に「この国には、どこに何があって、何が足りなくて・・・」を、片っ端から足で歩いて、把握することから始めました。つまり、誰に何ができて、どの団体・機関に何のサービスがあって、かつ、実際にそれを実行する人が「誰なのか」(=どのクオリティーでサービスを提供できるのか、どの程度責任を負えるのか)を、私のこの目で確かめて回ることでした。結果、この国には元来、女性の経済自立・起業支援に関するポテンシャルが大きく存在していることを知りました。
とにかくびっくりしたのは、2010年に設立された、Banca Mujer 女性銀行 の存在です。この銀行は、国立銀行 Banco Nacional の開発部 Departamento del desaarrollo が2010年に女性の経済自立・起業支援に特化した形で設立された銀行です。私がここで仕事を始めた2009年、この開発部に乗り込んだ時は、まさにこのBanca Mujerの構想段階でした。あのBanco Nacionalビルの3階・開発部の会議室で、ものすごいエネルギーを感じたのを、今でも良く覚えています。新しいものが生まれる瞬間の、”あのエネルギー”です。「こと女性の経済自立・起業支援に関しては、全然、日本より進んでいるじゃないか。」と、私はそう思いました。

本プロジェクトに関する研修や、様々な販売機会、挙句にそれに特化した銀行など、パーツ・パーツは既に存在している。しかし、それらが統合されていない。直接、利用者まで届いていない。それを知った時、「まさにこれこそ、市役所の役割だろう。」と思いました。そこで、それらを組み合わせること、市役所としての仕組み・体制を整え、直接女性たちにそれらの機会を届けることに注力して来ました。結局のところ、実際に私が行っている仕事は、コスタリカ国内に既にあった社会のエネルギー(銀行や省庁、ONG、市議会等)の交通整理をしているに過ぎません。


しかし、そんなある意味で整った環境にも関わらず、2重の問題が存在していました。それは、女性たちの自立支援という問題だけではなく、導く側(市役所スタッフ)の自立支援でもあった、ということです。

女性課に居るのは心理学者であり、ソーシャルワーカー。ビジネスのことは一切皆無、何も知らない状態でした。むしろ、お金に対しては苦手意識が強い人たち。私はここに来た当初、女性課スタッフに「女性の経済自立支援において、何をやっていきたいと考えていますか?」とヒアリングを行ったところ、「彼女たちが経済自立・・・?宝くじに当たるくらいしかないんじゃないかしら?」と言われ、唖然としました。「・・・。どうしてそれで、わざわざ日本から専門の人間を呼んだのさ?」正直を言うとその時、本気で日本に帰ろうかと、一度思いました。
でも、「確かに、それが本心の言葉だよな・・・。」と思ったんです。冷静に考えてみれば、やり方が分からないから、それでも本当は解決策を探したいと思っているから、わざわざ他国の人間までを呼んで方法を探しているのではないか?と。その後、別に彼女たちは放棄しているわけではないと知り、こないだの言葉は「本当に、良く分かりません。」という言葉の裏返しだったと、思うようになりました。「なんだ。ボトルネックはここ、市役所か。」と。であるならば、「こうやってやるんです。こうすれば、あなた達でもできますよ。」を明確に示し、市役所スタッフに自信をつけさせてその事業を残すことが私の仕事なのだと、最初の段階で腹をくくりました。


その時、私の目から見て市役所スタッフ(導く側)に明らかに足りないと感じたのは、2つの力。

導く側が「彼女たちは絶対にできる。絶対に到達できる。」と信じる力

それは、

導く側が「自分達は彼女たちを、そのレベルまで到達させることができる。」と、
信じられる力


とほぼ同意です。これは自立支援という仕事においては、大変に重要なポイントです。

端的に言ってしまえば、「できると信じて相手に向き合わなかったら、できるようになるものも、できるようにならない。」ということだと思うのですが、それは特に、他者への働きかけの際、大きく影響すると思います。私は日本で、若者自立支援という領域で10年以上の経営経験を積み、そのことを徹底的に学んで来ました。導く側に「あなたはできる。大丈夫。」と、本当の意味で、“自分と相手”を信じる力が無ければ、人はついてきませんし、誰も自立できません。

少なくとも女性たちは、「経済自立なんて・・・自分にできるのかしら。」と不安に思っている。それでも、「実現できるならぜひやってみたい。でもどうやってやるんだろう・・・?失敗したら、どうしよう・・・?」そういう不安を抱えながら、自分の生きる道を探している。その人たちと接するときに、心のどこかに「まぁ、言っちゃなんだけれど、無理だろうねぇ・・・」なんてことが一影でもあったら、それは確実に彼女たちに伝わってしまいます。そんな疑いを持ち合わせている人たちに、自分の生きる方向性を探る時間を、共にしたいとは思えないはずです。自分の身を委ねようとは、思えないはずです。ですから、最初に必要なのは、導く側に「自分達は、彼女たちをそのレベルまで到達させることができる。」と自信を持たせることだと考えました。


では、何をしていけば良いのか?

もちろん、単に“女性たちが本当に経済的に自立できる”と信じる・念じるだけでは、祈祷師ではありませんので実現しません。具体的に、本サービスを提供する市役所スタッフ(導く側)がそのことを心底信じられるよう、できる限り分かりやすいビジョンと、可能な限り簡素化した具体的なアクションや業務フローを定義し、更にそれを“実際にやってみせる”ことで、体験知として市役所スタッフと共有しながら構築して来ました。もちろん、現場の状況を無視したフローを作ったところで、誰もできません。しかし、最初の段階ではある程度の強引さも必要だと思いました。なぜなら、成功体験を共有することは、本当に大事な事だと思うからです。それが、彼女たちの自信になるからです。この自信さえしっかり押さえることができれば、私が居なくてもプロジェクトは確実に続いていくと思います。短い限られた期間に成功体験を共有することは、容易なことではありません。それでも、ミッション達成のために自分ができることは最大限したいと考え、とにかく成功体験を数多く残す、つまり、明確な成果をしっかりと出し続けて行くことに、こだわり続けました。1度や2度ではなく数回続いてくれば・・・、「これは自分達でも、真似すればできる。」と思ってもらえると、感じたからです。結局は、現場レベルにおけるニーズの的確な理解と、底上げによる明確なリーダーシップが必要なのだと私は思います。でも、それって、どこの国においても必要とされていることではないかと思うのです。

「あなた達は必ず成功する。」「大丈夫だから。」「こっちに行くよ。」を、常に、女性たちと市役スタッフに伝え続けることが私の仕事であり、それが実現した時の彼女たちの自信に満ちた顔を見ることが、何よりも私の仕事の醍醐味です。今、こうしてサンホセ市役所職員として、しかもここ女性課で働けていることを、とても嬉しく思っています。


※先週、5月5日に実施した、月例会議の様子。74名の女性たちが参加しました。



※この国では、会合が終わると必ず軽食が出て、団らんの一時があります。