さて。前回「El servicio nuevo 1 新規事業を立ち上げる1」の続き。
なぜ私は、市役所の中で新規事業を立ち上げることが、様々な意味で、現場が必要としているソーシャルサービスを一早く実現できるのではないか?、と考えていたのか。2つ目の理由は、”市役所職員は、基本的にルーティンワークが得意なはずでは・・・?”、と考えていたからです。
私は日本で、とても小さな非営利会社を自分で立ち上げ、10年間運営してきました。その時、新しい事業(ソーシャル・サービス)を生みだし継続していくためには、大きく分けて2つのフェーズがあることを常々感じていました。
1.ゼロからイチを生みだすフェーズ 【創業フェーズ】 と、
2.イチをジュウにするフェーズ 【継続フェーズ】 です。
(3.ジュウをヒャクにするフェーズ 【拡大フェーズ】 もあると思います。株式公開?とか?)
この各々のフェーズでは、様々な意味で、全く異なる能力の人材が必要になると思います。近しい能力の人同士ではなく、全く異なる能力を持った人が集まった方が、新しいことを生みだせる。創業(立ち上げ)フェーズに必要なのは、社会に対する大きなビジョンと、”えいや!”で生み出すエネルギー。 立ち上げた後の継続フェーズでは、決めたルールに則ってルーティンワークを続け、その中でプロジェクトの本質を見失わずに更なる改善ができる力。その両方のタイプの人間が居なければ、新規事業を生み出し、その事業が継続されることはない、と学んで来ました。
私は、どちらかというと(というより・・・完全に)立ち上げ屋です。全く何もない荒野の中から、社会で必要とされていることは何か?を考え、今”ここにあるもの”で実現できるサービスを考え出し、一定の規則性を見出して「仕組み」を作り出すことが、得意です。かけるエネルギーはとても大きいけれど、”生み出すこと”を得意としています。
一方、市役所職員は(どちらかと言えば)ルーティンワークを得意とする人たちが集まっているように感じます。彼らは、一度しっかりと枠組みが決まってしまえば、それを続けていくことに、そこまで大きな抵抗を感じていないように、少なくとも私の眼にはう映ります。それは、事業継続において、とても大事な能力だと私は思うのです。うちのようなベンチャー組織には、なかなかこういう人は入って来てくれませんから、逆にとても貴重な能力だと感じていました。ずっと続けてくれるのですから。
そのため、「これはひょっとすると、良い役割分担になるのではないか?」と考えていました。大雑把に言ってしまえば、私は立ち上げ(創業)係、市役所スタッフは継続係。もしこの役割分担がうまく作用すれば、きっと社会が必要としている”女性の経済自立・起業支援”の新しい仕組みを生みだせるに違いない。そんな希望と期待を持っていました。何より、私の仕事は2年間の限定契約。尚更、私が居なくなったと同時に、話が終わってしまった、では私がここに来た意味がありません。私が居なくなった後も継続する「仕組み」を作ることは、とても大切なことだと考えていました。
もちろん、それを実現させるためには、私にはいくつかの「責任」があると考えていました。それは、彼らが”これは継続するだけの価値がある”と素直に思え、それを彼らが大きな困難を感じずに継続できる仕組みとして残す必要がある、ということでした。困難を感じずに継続できる「仕組み」とは、その誰にでも分かりやすい、継続のために必要となる予算・人材・業務フロー・ツールを揃える、ということです。これはもちろん大仕事です。
とはいえ、日本のソーシャルベンチャーの人間が、地球の裏側コスタリカの市役所に飛び込んだのですから、事はそんな簡単には運びません。運ぶわけも、ありません。散々、ジタンダ踏みました。恥ずかしげもなく、大騒ぎもしました。
それでも幸いなことに、女性課スタッフ一同と共に、ほぼゼロから立ち上げて来たこのプロジェクトは、2011年5月、無事市役所の市長直属重点5カ年計画に正式に組み込まれ、少なくとも2016年まで市役所直轄のプロジェクトとして継続されることが決まりました。実を言うと2010年に、プロジェクト予算の外部からの資金調達に失敗し続け、”お先真っ暗”になったこともありました。でも、他銀行や省庁が「それは大事なプロジェクトだ。」と最初の初期投資分を確保してくれたことで、走り出すことができました。とはいえ私の計画では、初期投資分を外部から持ってきて、継続予算分を市役所内で確保するよう動いていたので、継続予算が確保されなければせっかく立ち上げたものも続きません。それでは意味が無いのです。でしたので、この市役所重点5カ年計画に組み込まれた時=5カ年間の継続予算が確保された時は、「受け入れてくれて、ありがとう。。」という気持ちと、正直”ホッとした・・・。”という安堵の気持ちでいっぱいでした。
スタッフ達とは「ここは譲れん。」「あんたのスペイン語じゃ何を言っているのか分からん。」と散々ぶつかりもして来ましたが、一切の後腐れなく率直に何でも言い合えるところは、スペイン語世界の良いところだと思います。日本人の私からすると、会議の場では「そこまで言っちゃって良いわけ?」と思うくらいズケズケ言い合います。それでも、すっきりさっぱり。建設的な話し合いのためには、一旦全部の考えを出し合う必要がある、という感覚すら得ます。その裏には、明確な指示系統が存在していたのですが・・・(そのあたりは、また後日。)、とにかく、仕事の進め方としても、とても勉強になりました。スタッフに恵まれ、とても良いチームができたと思います。一緒に仕事をしていて楽しいです。
この事業作りのプロセスについて、これから少しずつ書いていきたいと思います。(この続きはこちら)